太陽の船(仮題)詩

8月9日にあった日拝事件(?)の事を今更ながら詩にしてみました。

庭の一隅が私の祭壇
遥か遠く太陽の先に祈る
私は風と共に雲を抜け
そこを目指す

あなたの光は苛烈で優しい
もうその光を受けて幾年月となるだろう

春夏秋冬を幾つ重ね
あなたを見て来ただろう
祈っただろう

そこに在りてなお超然とし
私と別の空を往くあなた方
だからこそ惹かれるのだと思って居た

だがどうであろう
今
私はそこにいる
共に在る

床に足を付け
風を感じ
船縁から外を見る

夢の中の夢
幻の中の現実
夢幻の船は
今足元に在る

幾年の祈りは
新たな祈りとなる

常の道

全ては隠し世から現れる
後から前から地下から天上から
祝福されるものも
呪われるものも
名の言えぬ界から現れる

全ては地上を歩いて行く
それぞれ道を歩いて行く
番を持つものも
花をつけるものも
ただ独りいくものも

全ては歩いて去って行く
長い道を
短い道を
それぞれの灰色港を目指し

君も僕もあなたも彼も
全ては去りゆく定め
灰色港から西の地へと去って行く
そして
戻らない

西の地は不死の国
全ての過ぎ去った善なるものが過ごす土地
再会の地

月を目指す

この夜私は空を飛ぼう
月の見えない夜に空を飛ぼう
体を置いて空を飛ぼう

空を飛べば屋根を越え
空を飛べば身は冷えて
空を飛べば雲にかかり
雲を超えれば月が有る

そこに見えるは
私だけの月
私以外には見えない月
蒼く輝くまばゆい月は
この世のものではありえない

月を目指そう
そこに在る
月を目指そう
天にある
月を目指そう
私の心の中にある
外に在りて中に在り
中に在りて外に在る
さぁ 月を目指そう

小宇宙

『小宇宙』
高く深いぬばたまの中
そこだけ白く塗られた点がありました

誰も知らない高い次元
誰もが見ない深きところ
そこに白い点がありました

嵐の中の小舟のように
今にも呑まれそうになりながら
点は在り続けます

誰も気づかなければきっといつか塗りつぶされた点
それに気づいたモノがありました

そのモノはそっと一つ
点に想念を含めました
「我が願うが如く在れ」と

途端
点は周囲の空間を貪るが如く
食い荒らし
あっという間に変わっていきます
点は半概念から実在へと変わります

点は円となり球となり
そして私たちが認知出来ない何かになりました

何かはモノの言霊を叶えます
モノの願うが如く

何かはその中に小さな世界を作りました
モノのためだけの小宇宙
太陽が昇り
月が沈み
雲は流れ
風はそよぎ
山は全てを見つめます
小鳥も
馬も
狼さえ
すべてはモノのためだけに存在する小宇宙

約束の魔術師

君と僕の約束は
例え今生の別れにあっても
守ると決めたもの

あの時君は愚者となり
私は魔術師となると決めた
それが君と僕の約束

君と僕は約束した
例え言葉無くても
例え文字が無くても
遺された物で分かった

あの時から数度の危機を乗り越え
君が遺した物は半分を切った
しかし君が遺した約束は変わらない
些かさえも変わらない

いつか僕は楽園に往くだろう
君が待つその楽園へ
そこで僕は胸を張るつもりだ
最後まで約束を守ったと

蒼く黒い空よ

磨り硝子のように
揺らめく陽よ
その熱量だけは
どうか留めておくれ

モザイク画のように
揺らめく雲よ
自由に空を
どうか駆けておくれ

案山子のように
立ち尽くす吾よ
雲雀のように
歌謡いたまえ

どこまでも蒼く黒い空
綿のように白く対流する湯のように揺らめく雲
そのどちらをも
輝ける熱量で統べる
陽よ
ただ見つめるばかりの吾を照らせ
ただ立ち尽くすだけの吾を走らせたまえ

惑わす碧

青く碧く
深い空

拭うように
白い雲

眩しく惑わす
輝く日

僕はただ見上げるしかなくて
祈ることしかできなくて
そこに行けやしないのに
憧れて見上げるしかないのに
唯々吸い込まれるような深い碧
そこに僕の心は惹かれ行く

「巡る旅路」

星の海ゆかば
私も星のようになる
近くを飛ぶのはなんだろう
人だろうと妖精だろうと

精霊の海ゆかば
私は水のようになる
流れる潮に乗れば
どこまでも征ける

私はあなたを探す旅
新しい界を巡る旅
どこもどこでも
私は訪問者

そしてあなたは思わせぶりで
決して私に姿を見せない
私があなたを最後に視たのは
いつだろうか
本当にあなたを見たのだろうか

私は風の宙に舞う
古今のモノとともに飛ぶ
あなたの徴はここにも有って
あなたの姿はどこにもない

魂の遊戯

私は潜る
私の中へ

私は往く
天の高みへ

深みと高みは等しくて
際は繋がる

海の高さよ

私は拡げる
私の世界を

私は翔ぶ
知らぬ私を識るために

スフィアはいつも澄んでいて
パスはいつでも私を迎える

星幽界をただ往けば
四大のプレーンでただ遊ぶ

パスを往こう
試練を受けに
スフィアに往こう
知霊と語るために

生と死を超え
野蛮と高潔を呑み込み
風となり飛び
火となりて命燃やし
水となって流れ
地になれば全てを呑み込もう

そしていつか
私は見つけるだろう
遥か彼方の
神の座を

私は識ろう
遥かな底に
拡がる私を

わたしの水母

私は水母になろう
ぷかぷかと水面に浮かぶ水母になろう
大きな月を見上げながらゆらゆらと漂う水母になろう

真夜中に
月と星と私だけが居る
私は水母
水母は私
水面で繋がる海の中に

私は水面を通じて海となる
海には沢山の物が溶けている
私はそれを取り入れて
薄く輝く
私はそれを受け入れて
新しい私になる
私は沢山の恵みを受け止める
私はそれを
赤子のようにただただ受け止めて
ぷかぷかとつながり続ける

海になった私は
月を見上げる
星を見上げる
海になった私は
私の下に居る筈の
太陽を想う
いつか登ってくる
太陽を想う

私は広がる
ただの水母を超えて
海に
海から
空へ
そして
天を

だから私は水母になろう
ただの水母になろう
ぷかぷかと水面に浮かぶ
水母になろう